2. 生徒の集中力を引き出す方法


 

◆文章を真剣に読ませること

 

国語の読解力をつける方法はいくつもありますが、基本中の基本といえることがあります。

 

それは、「文章を真剣に読むこと」です。

 

長い文章を真剣に読むには集中力が必要です。

 

苦手な生徒ほど、長い文章になると集中力が続かず、眠くなったりぼーっとしたりします。

 

これは、生徒側の姿勢や性格も関係する問題ですが、ある程度は指導技術によって解決できます。

 

文章を真剣に読ませるには以下のような方法があります。

 

 

①文章を音読させる

 

生徒に文章を音読させます。

 

声を出すという積極的な行動は、脳を活性化させ集中力を持続させます。

 

音読は、以下のように指導の面でも有益です。

 

1) 読めない字、読み間違えている字がわかる。

 

2) 意味のかたまりをつかめているかわかる。

 

3) 書いてある表現を正確に読んでいるかわかる。

 

 

 

さらに、集中させる方法として、「マル読み」があります。

 

「マル読み」とは、文の終わりの目印である句点「。」が来たら、つぎの生徒に交代するという音読法です。

 

ひとりの生徒に長く読ませると他の生徒が聞かなくなることがあるので、一文ずつ交代して読ませるのです。

 

とはいっても、あまり、頻繁に交代するのもかえって内容理解にマイナスの影響が出ます。

 

文章の長さや生徒の集中力によって交代するタイミングは変えるのがよいでしょう。

 

テンポよく指名し本文を音読させると、眠そうにしていた生徒もだんだん元気になってきます。

 

 

 ◆ポイント◆

 

声に出すという積極的な行動が集中力を増す。

 

 

 

 

 

②文章内容を質問で確認する

 

文章を一通り読んだ後に、内容を一問一答形式で確認する方法です。

 

たとえば、つぎのような文章を読んだとします。

 

───── 以下引用文 ─────

 

吾輩わがはいは猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当けんとうがつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。

夏目漱石『吾輩は猫である』 

 

───── 引用文終わり ───── 

 

 

読み終わったら、次のように生徒に一問一答で内容を質問していきます。

 

 

講師:では、文章の内容を確認します。質問に答えてください。

 

講師:吾輩はなんですか? はい、山田くん 

山田:猫です

 

講師:何がないんですか? はい、田中さん

田中:名前です

 

講師:何が見当がつかないのですか? はい、鈴木くん

鈴木:どこで生まれたか

 

講師:どこでニャーニャー鳴いていましたか? はい、本田くん

本田:薄暗いじめじめしたところ

 

講師:吾輩は何を始めて見ましたか? はい、佐藤さん

佐藤:人間です

 

 

◆ポイント◆

 

・生徒一人ひとりに尋ねること

 

・即答できる簡単な質問にすること

 

・テンポよくすすめること

 

 

 

こうすると、生徒は一生懸命文章を読もうとします。

 

文章全体を尋ねるのは時間がかかるので、重要な段落の内容を確認するときなどに使うとよいでしょう。

 

 

 

 

 

 ◆問題を真剣に解かせること

 

①解答を答えさせ、ほめる

 

個別でも集団でも、基本的に生徒に解答を答えせる、これが重要です。

 

問題は、次のような生徒がいるばあいです。

 

ア)解けない生徒

イ)自信がない生徒

ウ)やる気のない生徒

 

 

アやウは、こちらでヒントを出して、一問一答式をくり返し、徐々に正解に近づけるとうまくいくことが多いです。

 

あらかじめ、正解に至るプロセスを確認しておき、途中過程を段階的に生徒に質問するのです。

 

 

たとえば、傍線部の指示語の指示部分に注目すれば解ける問題があるとします。

 

次のように正解に至るプロセスを段階化し、質問します。

 

①設問を読んでください。

②何を求めていますか。

③傍線部を読んでください。

④傍線部の指示語「それ」はどこを指しますか。

⑤指示語のさす部分を含む文を読んでください。

⑥その部分と一番似ている選択肢はどれですか。

 

これを何人かで回し、さいごに目当ての生徒に当てます。

 

で、正解したらメチャクチャほめる。

 

びっくりするぐらいほめる。

 

 

そうすると、たいていの生徒はやる気を出します。

 

 

イのばあいは、ふだんの授業中にとにかく「間違っても気にしないこと」「間違えることより間違いを繰り返すことを恐れよ」をくり返し言い聞かせ、教室の雰囲気を作っておくことが大切です。

 

間違えたときも、

 

・残念もうすこし

・おしかったね

・次リベンジだ

 

などと、肯定的な声掛けをすることが生徒に安心感とやる気とを与えます。

 

 

◆ポイント

 

・間違いを恐れない雰囲気づくり

 

・ヒントを出して正解したら強烈にほめる

 

 

 

 

 

②三色ボールペンで読解指導

  

読解の授業の典型的な形としては、

 

 

宿題や授業中に問題を解かせる

 ↓

答え合わせをする

 

 

というものだと思います。

 

ですが、この方法はある程度学力のある生徒さん相手に有効な方法だと思っています。

 

苦手な生徒さんにはあまり効果がないように思うのです。

 

 

そもそも読解が苦手な生徒さんは、どうやって解いたらいいかわからないことが多い。

 

もしかしたら、面倒がっていい加減に解いてくるかもしれません。

 

そんな解き方をしていたら、授業でいくらくわしい解説をしてもあまり効果がないでしょう。

 

 

そこでわたくしが考えたのが、「三色ボールペンでつける読解指導」です。

 

この方法は、10人程度の比較的少人数の生徒相手におこなう授業では有効な指導法だと考えています。

 

 

 

 

【三色ボールペンで読解指導の方法】

 

1. 生徒みんなで読解問題の文章を音読する。

 

2. 時間を決めて問題を解かせる。

 

3. 机間巡視し、生徒が解答を書いたらすぐに採点する。

 

4. 一回で正解したら赤色の〇、二回目は青色の〇、三回目は黒色の〇で採点してゆきます。

 

   

※ 採点時、不正解の生徒には、ヒントをだします。

※正解していたらなぜこの答えになったのか説明させます。

※誤答は消さずに残しておかせます。

※ 正解したら大げさに褒めるようにします。

 

 

 

 

この方法で指導すると、どの生徒さんもかなり真剣に本文を読み考えるようになります。

 

 

全体で答え合わせをすると、一回間違えてしまうとそれで終わり。

 

答えを聞いて「ふーん、そんなものか」と思って終わり。

 

ところが、上記の方法で解かせると、だいたいの生徒さんは正解になるまで一生懸命考えるようになるのです。

 

おそらくこれは、

 

・3回まで解答を出すチャンスがあること

・間違うことが逆に解答のためのヒントになること

・自分で正解にたどり着く喜びが得られること

 

 

といった点がモチベーションを上げやすくするのだと思われます。

 

 

この方法を採用してから、苦手な生徒さんも読解に集中するようになりました。

 

なにより本文をしっかり読むようになったのです。

 

苦手な生徒さん、集中力が続かない生徒さん相手には、なかなか有効な方法だと考えています。

 

 

 

 ◆ポイント

 

・三色ボールペンですぐに○付けをする。

 

・答えを教えず正解するまで何度も解かせる。

 

・解答によって点数化する。

 

・正解したら大げさにほめる。

 

 

 

 

 

 

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