1. 文章の目的を理解する

 

◆文章の目的とは

 

文章というものは、個人的なメモや日記などを除いて、書き手側に誰かに伝えたい事実や考えがあって、それを伝えるために書かれています。

 

入試の読解問題に取り組んでいると、問題を解くほうに気をとられ、この文章の目的を忘れがちです。

 

しかし、入試問題では、この「書き手の伝えたいこと」を適切に読み取れているかどうかが、さまざまな面から試されているのです。

 

ですから、入試問題の学習でも、「書き手の伝えたいことを読み取ること」を目指すのが第一の課題なのです。

 

 

 

◆文章の種類

 

入試の読解問題には、つぎの3種類の文章があります。(ここでは和歌や俳句などの韻文は除外します)

 

1)論説文

2)小説文

3)随筆文

 

 

それぞれ文章としては違いがありますが、どれも「書き手(筆者・作者)の伝えたいこと」があります。

 

 

以下、それぞれの文章の特徴と目的について解説します。

 

 

 

1)論説文の目的

 

論説文とは、筆者が、ある物事について持っている主張を読者に伝えるために書かれた文章です。

 

ですから、論説文の書かれた目的「筆者の主張を伝えること」であり、読み手の目的は「筆者の主張を読み取ること」なのです。

 

 

入試の論説文の筆者の主張は、せいぜい100字程度におさまる内容です。

 

では、なぜあんなに長いのか?

 

それは、読み手を説得するためです。

 

論説文の筆者は、「なるほど確かにそうだな」と読み手に納得してもらうことを目指します。

 

そのため、理由をのべたり、具体例を挙げたり、たとえ話を使ったり、表現を変えて主張を繰り返したり、自分と異なる意見に反論したりと、さまざまな方法を使って読み手を説得しようとします。その結果、あんなに長くなるわけです。

 

 

入試問題は、筆者の主張を読み取ることを到達点として、途中の説明であるいろいろな部分(理由説明・具体例・たとえ・繰り返しなど)の理解も求めてきます。

 

優れた入試問題というのは、解き終わったあとに各設問と答えを一望すると、「各設問がつながりを持った文章のくわしい説明」になっていることが多いのです。各設問が、筆者の主張を伝えようとする文章のそれぞれの部分の役割の解説になるからです。

 

 

つまり、入試の論説文の読解というのは、いろいろなことが問われていても、けっきょくは「筆者の主張の理解」が最重要の目的ということになります。

 

 

論説文の目的は「筆者の主張」を伝えること

 

 

これをしっかりおさえて論説文を読みましょう。

 

 

 

2)小説文の目的

 

小説文とは、作者が作り出した想像上の人物がいろいろな状況のなかで考えたり行動したりする様子が描かれた文章です。

 

小説文も、「作者の伝えたいこと」があって書かれています。これを「主題」といいます。

 

たとえば、

 

・中学生を主人公とし、部活動内でのレギュラー獲得をめぐるいざこざを通して、「友情の美しさ」を描く

 

・高校生を主人公とし、進路をめぐる親子の対立を通して、「親子の愛情」を描く

 

などです。

 

 

しかし、小説文では、「作者の伝えたいこと」が言葉として明示されることはほとんどありません。

 

「この作品は友情を描いています」とか、「親子の愛情を書きました」などと本文中に書いてあるわけがありません(本の帯などに書かれることはあります)。

 

主題は、登場人物のセリフや行動、情景描写(風景やできごとの状況)などを通じて、象徴的に示されるのです。

 

 

 

入試の小説文の読解問題は、それぞれの場面における登場人物の心情理解が問われることが多いです。

 

しかし、それぞれの場面における登場人物の心情を通して、作者が伝えようとしている主題を読み取ることが最終的な読解の目的になります。

 

つまり、各設問の心情理解は、主題を理解するための材料となるのです。

 

 

逆に言うと、主題を意識して読むことで、それぞれの場面での登場人物のセリフや行動の言語化されない真意が読み取りやすくなるのです。

 

 

 

小説文の目的は「作者の考える主題」を伝えること

 

 

これを十分に意識して、小説文を読んでください。

 

 

 

3)随筆文の目的

 

随筆文とは、筆者の見聞や体験や感想などを自由に表現した文章です。

 

随筆文にも、「筆者の伝えたいこと」があります。

 

ただ、その主張は論説文ほど明確でないし、小説文ほど象徴的でもありません。

 

読者に納得してもらうことを目指すことをそこまで強く目指さないので、論理的に筋道立てて論を展開するということはあまりありません。そこが、論説文との違いです。

 

小説文と同じように、登場人物の心情が言語化されず象徴的に表現されることがありますが、筆者の体験や見聞なので、想像上の出来事ではありません。そこが小説文とは違っています。

 

 

しかし、伝えたいことがある点では、随筆文も論説文や小説文と変わりありません。

 

 

随筆文の目的は「筆者の考えや感想」を伝えること

 

このことを意識して、随筆文を読みましょう。

 

 

 

 

 さて、以上のようにどの文章にも書かれた目的があることがわかりました。

 

入試問題でも、上記のそれぞれの文章の目的をしっかりおさえて取り組むことで、読解がしやすくなるはずです。

 

 

 

◆まとめ◆

 

文章の目的をはじめに確認してから読む

 

 

 

 

 

 

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